1)更年期とは

更年期は、女性の一生の一時期で性成熟期から老年期への移行期です。また閉経を中心とした前後数年(40〜55歳頃)の期間で、卵巣の機能が衰え始めて女性ホルモンの分泌量が激減し、妊娠しにくくなったり、月経が不規則となりついに停止します。女性ではこの時期に間脳‐下垂体‐卵巣系に顕著な変化が起こるため、種々の自律神経失調症がみられることがあるあり、これを更年期障害と呼びます。

2)更年期障害の症状

更年期障害は、更年期に現れる不定愁訴症候群であり成因には自律神経性と心因性があります。不定愁訴としては、ほてり、のぼせ,発汗、冷え性、頭痛、めまい、耳鳴、不眠、しびれ、知覚鈍麻、肩こり、腰痛、頻尿、疲労感、食欲不振など多岐にわたります。いずれも自覚症状のみで他覚所見がみられませんので、内科や神経科などで症状を訴えて検査してもはっきりした原因は見つかりません。そうしたときに更年期障害を疑って、それに応じた対処をしてもらえれば速やかに症状が消失するのですが、対症療法のみだとすっきりとした治癒が得られないことがよくあります。

3)更年期障害の治療

更年期障害の治療は、女性ホルモンの補充、自律神経薬、向精神薬、漢方薬などが用いられ、心因性のものには心理療法などが行われます。しかし、更年期障害の根本的原因が女性ホルモンの急激な減少にある以上、適応外の一部の症例を除いて女性ホルモンの補充が最も的確な治療法であることは言うまでもありません。当院では、開院以来女性ホルモン補充療法に積極的に取り組んでおり、更年期障害の除去に非常に高い率で成功しています。ただ、ホルモン補充療法はその量とタイミングを決定するのに微妙な要素があり、かなり経験に裏打ちされたコツが必要です。乳癌や血栓性疾患既往のある方には、少なくとも相当な注意を払いながら実施する必要もあります。

4)女性ホルモン補充療法の効果と副作用

女性ホルモン補充療法は、的確に行えば骨粗鬆症発症率を非常に低くすることができます。骨粗鬆症に関しては女性ホルモンが女性のカルシウム吸収率を非常に高くすることが判っています。数字であらわしますと、閉経以前のカルシウム減少率の年率−1%が女性ホルモンが不足しますと年率−2%へと二倍に増加します。それだけ速く骨がもろくなってゆくわけで、日本の食事中カルシウム量の不足と相まって骨粗鬆症が起きやすくなってしまいます。
ホルモン療法と聞くと、「何となく恐ろしい様な気がする」、「予期しない副作用が出るのではないか」と気にする人がたくさんいます。確かに全く副作用がないとは言えませんが、上手に行えば副作用よりも効果の方が遙かに大きくできます。副作用の代表的なものとして第一に偽月経があります。これは生理周期に近づけて服用する方法で休薬期間にしばしば起きる出血で、ある意味で仕方がないものと言えます。女性ホルモン補充療法自体がホルモンのレベルやリズムを閉経以前の状態に戻すものである以上こうした出血が起きるのは必然とも考えられ、もしどうしても偽月経が耐えられないならば漢方薬など他の方法に頼らざるを得ません。次に多くの皆さんが大変気にしている発ガンについてですが、今までの統計によればエストロゲンとプロゲステロンの二剤併用方式で、子宮体部癌は減少させ乳癌は若干増加させます。ただ、確かに乳癌の発生率は増加するのですが、乳癌での死亡率は逆に減少するとの統計結果が出ており、これはできた乳癌がいわゆるタチのよいものが多いことを示しています。近年アメリカでの大規模試験で乳癌と脳血栓の増加が報告されましたが、肥満が40%に見られるような米国女性に強い卵胞ホルモンと黄体ホルモンを毎日服用してもらう調査で、肥満の程度と動脈硬化の少ない日本の女性とは相当事情が異なります。ただ、こうした副作用増加の懸念は確かに無視できませんので対策をしっかりする必要があり、当院では副作用をうち消すような対応法を用意しております。
いずれにしても、女性ホルモン補充療法を受けるか受けないかは価値観の問題で、「自然の老化現象に逆らってまで元気でいたくはない」とお思いの方は、この治療を選択する必要は全くありません。費用の問題や偽月経などの煩わしはあっても、肌の老化や骨粗鬆症予防により高い価値を見いだされた方には大いにお勧めできる治療法です。最後に、一時的に女性ホルモン補充療法を受けた人が何らかの理由で中止した場合ですが、このときにはホルモンの少ない閉経後の状態に戻るだけでいわゆるリバウンド現象は報告されておりませんのでご安心下さい。

'05/7/18更新


トピックス / 診療案内 / 医院の地図 / プロフィール/操体健康法
院長監修記事 / 操体法 / 癌の免疫療法 / 健康講座/アイガード