上手な入浴法

1)入浴の目的

入浴の目的は何でしょうか。まず第一にあげられるのが、体の汚れを落とすことです。一日のうちに分泌された皮脂や汗が蒸発して残った成分、また外部から付着した各種の汚れを清潔なお湯で洗い流すことが大きな目的であることは間違いありません。次に考えられるのが体を温めることです。ここで体を温めるのが何故重要なのでしょうか。それは、体が暖まれば体内の代謝が活発になり疲労が回復しやすくなるとともに、体温が高めに維持されている間は肝臓が体温を作り出す負担から解放されるからなのです。その他に、入浴の効果としてストレス解放効果があります。この効果発現のためには入浴環境をととのえることが重要で、郊外の温泉の景色のよい野天風呂が最高と言われる所以です。

2)入浴法

第一の体の汚れを落とすためには、清潔な水で体に害を与えない石鹸で洗えば良いでしょう。水の清潔さは水道水を使っていればまず問題はありませんが、体にやさしい石鹸は仲々ありません。理想的には皮膚のpHに近く、洗浄効果が高いものが望ましく弱酸性のシャンプーを体に使えばほぼこれに当てはまります。ただ、石鹸やシャンプー液は界面活性剤という皮脂を取り除く成分が多く入っており、頻繁に洗いすぎると肌を乾燥させすぎる心配があります。そうした乾燥しすぎによるガサガサした肌を防ぐには毎日洗わずに、一日おきとかにするとよいでしょう。
第二の体を暖める入浴法ですが、人間は皮下脂肪が男性でもけっこう厚く体の深いところまで十分に暖めるには短時間の入浴では不可能です。しかし、頚までお湯に浸かった状態で長時間入浴していると循環器系に負担となり高血圧の人などでは事故の発生も考えられます。そこで、循環器系の負担なしで長時間入浴可能にする方法として腰湯があります。どのようにするかといいますと、浴槽内にお湯を浅めに張るか椅子を沈めるなどしてお湯の面が心臓の高さ以下(お腹が沈むまで)にして入浴するのです。こうすれば肺や心臓への圧迫がなく、循環器の負担なく長時間入っていられます。次に、十分に体が暖まったかどうかの目安は、顔がポーと暖まってきて浴槽から出ても寒さを感じなければよいと言えます。入浴から出る前に体の表面の血管を引き締めて熱の放散を防ぎ、かつ自律神経の鍛錬の意味もあるので手足の先に冷水をシャワーで掛けると更に効果的です。

3)入浴時間について

一般的には、湯冷めを防ぐためと称して就寝前に熱い風呂に入ることが行われていますが、結果的には大変湯冷めをしやすい入浴法です。何故ならば、先ほども述べたように人間の体はある程度の皮下脂肪があり、皮下脂肪は断熱性がよいので仲々熱が深部まで届きません。更に熱いお風呂の場合は、皮膚表面の温度がが急激に上昇し、体の内部は冷えたままなのに表面だけ熱い状態になります。そうすると、上がりすぎた表面温度を下げるために発汗し熱がどんどん奪われてしまい、結局お湯からもらった熱量よりも出てゆく熱量の方が大きくなってしまいます。そのほかに、就寝前は夕食からの時間がそれほどたっていないので消化器系はまだ活動中のことが多く、その状態で入浴すると消化管の血液を皮膚に集め消化機能を阻害します。
こうした弊害を防ぐ入浴タイミングは、循環をつけたり冷えを取ることにより一日の疲れがとれ、かつ消化器に食物の入っていない夕食前が最善です。夕方の入浴が仕事の都合などで不可能の時は、次善の策として朝がよろしいでしょう。

4)塩湯について
皮膚にトラブルのある方や腎機能の弱い方は、塩湯が大変効果的です。海水を天日で干した天然塩はミネラルのバランスや海水中の有効成分が失われていないので、塩湯に最適の塩と言えます。
入浴方法は、健康維持ないし軽症の方は浴槽一杯に約20g(大さじ一杯分)、重症の方は約400g(大さじ二杯)の天然塩を入れます。風呂の温度は約38度にし、頚まで入ると循環器に負担となりますので、下半身だけにしたり全身にしたりして約15分以上浸かります。冬季は上がる直前に40度程度まで暖めても構いません。追い焚きの出来ないお風呂の時は、お湯を加えたときに適当な量の海水塩を追加します。

copyright Tadashi Kashimada、update 2010/9/6

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